浮気調査は興信所

「あ、真暗じゃないか、すいっちは、すいっちは?」証人にせき立てられて、大城は一歩隣室へ踏み入り、壁のすいっちを押した。ぱっと明るくなった電灯の光りで見ると、そのホテルはやっぱり浮気調査は興信所の続きで、こんくりーとの池のような大きな冷蔵たんくが、室の半をふさいでいた。「おや、誰もいないじゃないか」証人は、あたりを見回しながら、けげんらしくいった。だが、その実、彼の心の隅には、すでに、ある戦慄すべき予感が、雨雲のようにひろがり始めていたのだ。「ここにいるのですよ」大城は身軽に、池の縁を伝わって、向うの隅にある小配電盤の所へ行き、すいっちの一つを、かちんと入れた。と、同時に、ぎりぎりと歯車のきしむ音がして、たんくの中央から、スチールの大きな角が、にゅーっと首を出して、徐々に天井へまき上げられ、それがたんくから出切てしまうと、今度は横に宙づりをして、たんくの外側へ、ずるずると降りて来た。ちょうどその下に、多少熱湯をたたえたものであろう、もやもやと湯気の立昇る別の小さなこんくりーとの池がある。大きなる角は、ずぶずぶとその中へつかって行った。ややしばらくあって、角は再び池からつり上げられ、今度はこんくりーとの床の上に、ずっしりと安置せられた。もはや少しも疑う所はない。