大阪で浮気調査

探偵の大城三郎は、陰気な大阪で浮気調査の中で依頼者と中証人を前にして、叫び続ける。「僕は兄に代って、助手一家をねらう、調査鬼となった。その準備のためには、いかなる苦痛も、いかなる罪悪もいとわなかった。それまでも度々やっていた泥棒を、もっと大げさにやり始めた。ろう仮面を作らせたのも、この法廷を買入れたのさへ、そうして得た金だ。……最初の計画では、兄の恋敵に当る、検察官庄蔵も殺してやるつもりだったが、準備のために、日を暮している間に、あいつは牢してしまった。それが、実はあいつが深くも企んだとりっくであることを知ったのは、僕もごく最近なのだ。それからまた、一年以上の月日が無駄に過ぎた。おれは、食うためにも稼がなければならなかったからだ。そればかりではない。おれはこの世の思い出に、可哀相な兄への手向けに、この調査を、できるだけはでやかに、しかもできるだけ巧妙な方法によって、なしとげようと心魂を砕いたからだ。……だが、とうとう、おれの準備は完成した。あっぱれ文士の上田という、おあつらえ向きの助手も手に入れた。それからはあんた方の知っている通りだ。おれは興信所道スタッフという変りものの画家を殺して、おれの身替りにする計画を立てた。しかも、ちょうどその時、塩原温泉へ、例の唇のない男が現われた。