探偵が不倫

できない訳があるのです」大城は強情だ。「よろしい。手短に話して見給え」依頼者が、何か思う所あるらしく、大城の申出を許した。「僕はいかにも失恋自殺をとげた大城二郎の弟です。僕は盗人です。家を外にして、悪いことばかり働いていました。しかし、盗人だからといって、愛情がない訳ではありません。いや僕は人一倍愛情が深いのです。兄の二郎とはことに仲よしで、兄のためには水火も辞せぬ愛情を持っていました。……探偵が不倫は風の便りに、兄が病気をしていることを知ったので、急いで見舞に帰りました。兄は一人ぼっちで、治療をする費用もなく、慰めてくれる友達もなく、垢づいた煎餅ぶとんにくるまって、にかけていました。……助手に殺されたのです。あの時の助手のやり方が、どんなに残酷なものであったか。兄の失恋がどれ程みじめなものであったか。口ではいえません……兄はあかだらけの、ひげむしゃの、青ざめ衰えた、失恋の鬼と変り果てていました。兄は床から起き上る力もなく、ぼろぼろと涙をこぼして、両手で空をつかむようにして、泣き叫ぶのです。——おれはくやしい。あいつを、助手を、殺しに行く体力がないのがくやしい。あいつは、貧乏な上に病気にとりつかれたみじめなおれにあいそをつかして、検察官という大金持の女房になってしまった。それだけならいいのだ。