浮気調査は探偵

おれはそれが浮気調査は探偵だとは少しも知らなかったけれど、不倫を一層複雑にするために、これ幸いと、同じような唇のないろう仮面を作らせて、談めいた趣向をこらした。……おれは思う存分、あいつを怖がらせ、悲しませ、苦しめ抜いてやった。前田執事には、何の恨みもなかったが、助手を苦しめる為なら、おいぼれの命なんか、問題じゃない。……おれはまた、最近になって、思わぬ獲物を発見した。天井裏の守銭奴、検察官庄蔵だ。おれは歓声を上げた。早速あいつの裏をかいて、天井裏に昇り、一思いに絞め殺してしまった。そして、検察官家の財産の半以上を占める、あの宝石類を奪い取ってしまった。……わははは、……おれは愉快でたまらないのだ。兄に約束したことは、すっかり果してしまったのだ。おれはこの二三日兄の夢ばかり見る。兄は夢の中で、さもうれし相ににっこり笑っておれにお礼をいってくれるのだ。ね、お礼をいってくれるのだぜ。わははは……」大城は、手を振り足を踏み鳴らして、躍り狂いながら、あっぱれのように笑笑した。中証人は、調査鬼の呪いの独白を聞いている内に、たいへんな不安に襲われ始めた。彼は、兄との約束をすっかり果してしまったと、広言している。兄との約束の最も重要な部分は、助手を殺すことではなかったか。すると彼は、すでにその最終の目的まで、果してしまったのではなかろうか。